ここからは後翅の変異に移ります。
まずは後翅橙紋からです。
この部分の橙色は、クモマツマキチョウの橙色のようには目立ちませんが、翅全体の美しさをよく引き立てています。
また、翅全体を人の顔に例えた時に前翅の黒紋を目だとすると、ここは頬のように見える部分で、私にとってはモンキのチャームポイントとなっています。
では、橙紋の大きさの変異から見ていきます。
橙紋の大きさの違いは一目瞭然ですね。
右の個体はかなり翅が擦れた状態ですが、橙色はしっかりと残っています。
そして、形は左の個体の橙紋がそのまま大きくなったのではなく、いびつな形になっています。
そこで、橙紋の大きさがこれらの中間の2個体の橙紋を見てみます。
左の個体は左上の写真の個体よりも橙紋が大きくなり、斜め上に小さな橙紋が現れています。 そして右の個体はその二つの橙紋が融合し、やや外側下方に広がって右上の個体に近づいています。 それぞれの右後翅の橙紋を拡大して段階的に見てみます。
私が今のところチェック&採集した個体は、確認してみるとすべてこの段階に沿った形を持ったものばかりでした。 それ以外の形を持つ個体を得れば、また紹介します。
次は、橙紋の色合いの変異です。 まずは、橙色が薄いものと濃いものを、分かりやすいように白色型♀で並べてみます。
ともに新鮮個体です。 左はスレて橙紋が薄くなっているわけではありません。
続いて、橙紋が黄色いものと、白いものを並べます。
翅の地色とほぼ同じような色となっています。 白色型♀では同様に白い橙紋を持つ個体が他にも見られました。
さて、翅の変異を部分的にまとめるのは、この後翅黒縁が最後になります。
後翅黒縁はあまり注目していなかった部分ですが、どのような変異がみられるのでしょうか。
そこで、各個体の変異をみていたのですが、この後翅黒縁の個性が翅の各部分の中で最もバラエティに富んでいることが分かりました。
太い細い、長い短い、連続不連続、一重二重、濃い薄い、そしてこれらが複合して各個体に現れているのです。
では、特徴的なものを8個体、ピックアップしてみます。
左は細く短いもので、右は太く長いもの。
左は黒縁が波打っているもので、右は途切れ途切れになったもの。
左は途切れながら薄く二重になったもので、右は途切れながら濃く二重になったもの。
二重とは、後翅亜外縁(外縁の少し内側)にも黒斑が並んだものです。
左は途切れていますが薄くて消えかかっているもの。 右は翅脈に沿ってわずかに黒色が確認できますが、黒縁としてはほぼ消失しているものです。
これまでにチェックした全個体を見ていると、それぞれの個体の前翅黒縁と後翅黒縁の発達具合は、ある程度一致しているようです。 そして、それに合わせて前翅黒縁と同じく、春型の方が後翅黒縁の発達が悪い個体が現れやすいようです。