2023 気まぐれ遠征記

〜 御蔵クロヒカゲ編 @ 〜


 ミクラクロヒカゲ。 以前から気にはなっていた蝶ですが、気にしないフリをしていました。 理由は2つあって、1つはただの亜種であるということ。 これに費用をかけるなら、八重山へ新規の迷蝶を狙いに行きたいと思ってしまうのです。 もう1つは生息地へのアクセスの悪さ。 長時間の乗船が嫌なんです。 小笠原行きでもうコリゴリです。 ただ、御蔵島へはヘリコプターで渡るという方法があります。
「しかし、そこまでしてクロヒカゲ撮りに行きたいか?」
これまでに何度も自問し、ついに今年、「よし、ヘリで行ってみよう」と決心がつきました。

 御蔵島では、許可なく動植物を採取することは禁止されています。 また、宿泊先が決まっていないと入れない島で、テントを張ることもできません。 しかも宿の数が少ないうえ、イルカウォッチングが人気の島で宿の確保が難しく、さらに船の欠航率も高い・・と、なかなかハードルの高い島なのです。

 今回、宿が取れなければバンガローがあるので毛布持ち込みで泊まろうかと思い(コロナ以降、寝具貸与なし)、仮予約していましたが、2軒目の申込みでなんとか宿を確保。 ただし申込開始が宿泊2か月前だったため、季節進行は考慮できませんでした。 そこで、GWの混雑を避けつつ、発生初期と思われる時期よりもやや遅めの日程にしました。 スレはともかく、フライングは最悪です。
 そう、1回で事を済ませたいのです。


  2023.5.9

 前日の夜に新幹線で東京へ移動し、蒲田駅近くのビジネスホテルに宿泊。 朝6:00出発、京急で羽田空港へ。 そして今年の一本目、7:30発のANA便でまず八丈島へ飛びます。 八丈島ではヘリの搭乗時刻まで2時間半ほどあったので、強風の中、空港裏にある植物公園まで歩き、少しだけ蝶を撮影。
「八丈島にもツバメシジミおるんや・・」 他にはテングチョウ、ルリシジミ、キタキチョウ、モンキチョウ。 初めての島なので普通種でも撮っておきます。


ツバメシジミ(♀) 2023.5.9 東京都八丈町(八丈島)

 植物公園へは全ての荷物を詰めたリュックを背負ったまま歩きましたが、5s超の手荷物はヘリで超過料がかかるので、重量は抑えてあります。 空港へは早めに戻り、50分前から始まるヘリの搭乗手続きへ。 名前と体重を聞かれ、リュックを計測します。 4.95sで予定通りクリア。 その後、重ね履きしていたズボンを脱ぎ、さらにポケットからカメラ予備電池2個、焼酎ミニペット、歯磨きセットを取り出して全てリュックへ。 作戦成功。
 「しかし1kg毎260円の超過料金をケチるアラフィフってどうなんやろ・・それが今の日本の現状か」 と大袈裟なことを考えながら出発を待ちます。

 ヘリの定員は9人。 指定席ではなく搭乗する順に席に着くらしいので、先頭で搭乗を待って係員の誘導に付いていき、一番前の窓側を確保。 ヘリコプターに乗るのは初めての事で、心は少年に戻っています。 乗り込んですぐにコックピットをスマホ撮り。
 やがてヘリは真上方向に浮上、そして飛行機よりも低空を飛行していきます。 海の上だからか、あまりスピード感はなかったですが、25分で90kmほど離れた御蔵島に到着しました。

 ヘリポートは集落の端にあり、そこから10分近く歩いて、集落にある「山じゅう」という宿にチェックイン。 そして荷物を降ろし、すぐに山へ向けて出発します。 この島ではガイド無しで歩ける林道が限られており、島の西回り、東回りの主要な車道を進んで行くしかありません。 午後からなので西回りの林道を選び、進み始めるとすぐに集落から正午の時報メロディが流れてきました。 与那国島の正午に流れるのと同じ「グリーンスリーブス」で、なんとなく、離島に来たという哀愁が感じられる曲です。

 それでも心はウキウキ、と言いたいところですが、山の天気は曇りで低温で強風。 暗い林道を進みますが、寒く感じるようでは蝶は飛び出しそうにありません。
「アカンな。止まってる個体を見つけんと。」 とくにササ類がある場所では注意しながら歩いていきます。 そして林道3キロ地点を過ぎたところで、
「あ、おった。」


クロヒカゲ(♂) 2023.5.9 東京都御蔵島村(御蔵島)

 内心、静止個体を見つけるのは難しいかなと思っていましたが、いい所に止まっていました。 確かに、地元のクロヒカゲと比べると明らかに小型で、眼状紋の現れ方も異なっています。 「これは別モンやな・・」
しかし低温のためか、この個体は徐々に近づいて撮影してもジッと止まったまま動きません。 そこで、翅表も見てみたくなったのでプロキャプチャーに切り替え、蝶の前方に帽子を放り投げると、藪の奥へ飛び去っていきました。 翅形や翅表の斑紋から、これは♂だったようです。

 さて、ひとまずの目的は達成しました。 しかし明後日のヘリの出発まで時間はまだ十分。 天候の事も考えて御蔵島で2泊、正味2日間は探索できるように日程を組んでいます。 他にも色々なシーンや他種も狙いたいので、探索を続けます。 とりあえずこの林道を奥まで進んでいき、ガイド無しで進める最終地点の展望台で引き返すことにしました。
 そして、復路の途中から少し日が差し始め、さらにクロヒカゲを3頭確認できました。


クロヒカゲ(♀) 2023.5.9 東京都御蔵島村(御蔵島)

 撮った角度で前翅がより尖って見えますが、これは斑紋から♀のようで、地元の♀に比べると丸みのない印象です。 この個体は、明るい場所に出てきたので止まる位置を確認できましたが、陰になっている林道を飛ぶと、黒くてスピードがあるので目で追うのが大変です。 またこの他には、暗い中、樹液を吸汁する個体を撮影しました。
 ちなみにクロヒカゲ以外では、ほとんど蝶を目撃せず、唯一見たのはアオバセセリでした。 これはテリトリー空間を超高速で飛び回っており、距離もあったので撮るのを諦めていたら、なぜか急に射程内の葉上に静止。 慌ててカメラを構えましたが間に合いませんでした(苦笑。

 

 宿に戻ると、朝にフェリーで到着しているイルカウオッチングの人たちで賑やかなのかと思いきや、夕食の席は私一人。 「なんで?なかなか予約取れないハズなのに?」
どうも2日前からフェリーが欠航していて、他の客は来島できていない様子。 結果的にはヘリを利用したのが幸いでした。

 この島では夕食を食べられるような飲食店がなく(ちゃんと調べられていないだけかも)、2食付きで宿を予約しています。 思っていたよりも夕食は良く、私はこれで十分。 焼酎は持ち込んで湯割り。 メインは初めて見るタイプのピーマン肉詰め、左上はパインと思って最後に食べたらイモでした(笑。

 島の規模を考えれば、ここはなかなか設備の良い宿で、ウォシュレットトイレ、部屋にはもちろんテレビもあります。 イルカ繁忙期でないためか相部屋NGでも予約できたので、ゆっくり寛ぐことができました。 この日の歩行距離は16〜17km。 連日歩くことになりそうなので、翌日に備えます。

  <続く>

 ※ 御蔵島では許可なく動植物を採取することは禁止されています


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